さいたま西で新年が明けたことを祝う伝統の「指扇の餅搗(つ)き踊り」が行われ、大勢の来場者に縁起の良い祝い餅が振る舞われた。
年が明ける0時前に始まったイベントでは、まず万作踊りを披露。続いて、小さめのきねを手にした4人の踊り手が息を合わせてリズム良く空臼をつく「曲搗き」を披露。「水車」「風車」など、クルクルときねを回す妙技に会場から歓声が沸いた。実際に餅をつく「しんしょう搗き」では、4人がテンポ良く餅をつき、4本のきねで祝い餅が高々と掲げられた。つきたて餅は、きな粉などをまぶして来場者に振る舞われた。
同踊りは、かつて「接待餅」と呼ばれ、成人式、新築祝い、七五三の祝いなど、地域の祝い事の際に披露されていた。別所、赤羽根、宝来の3地区で行われていたが、共用していた道具の保管倉庫が1960(昭和35)年に火災に遭った後、しばらく途絶えていた。しかし、地元から復活の声が高まり、1993年に3地区の踊りを統合し「指扇の餅搗き踊り」として復活。以来、新年を祝う行事として毎年元日の0時に開催されている。2003年には、さいたま市の無形文化財に指定されている。
保存会・会長の池谷勝則さんは「この餅を食べれば、今年は無病息災間違いなし。縁起のいい餅として、ぜひ多くの人に食べてほしい」と話す。会では踊りの教科書を製作し体験練習する機会を設けるなど後継者育成の準備を進めているが、15人いるメンバーは高齢化しているのが現状。地域の祭りで声が掛かることも多いが、対応しきれないのが現状。ぜひ、若い人に継いでほしい」と参加を呼び掛ける。