「菓子工房まーぶる」(見沼区堀崎町)が2021年5月1日で市制20周年を迎えるさいたま市とともに、開店20周年を迎えた。
菓子工房を営むのは松林淳子(あつこ)さんと夫の省策(しょうさく)さん。20周年を記念して、埼玉県が開発したイチゴ「あまりん」のケーキを用意した。こじんまりとした菓子工房は閑静な住宅街の中にあり、開店前から客が並び淳子さんが丁寧に接客をしていく。
3人兄弟の長男が小学校低学年で難病を患い、小中学校時代を通して蓮田の小児病院に入院していたという。病院に自転車で通える場所に転居し、子育てに奮闘しながら長男の厳しい食事制限に合わせ、子どもたちのために自然な素材でケーキを作ったのが「まーぶる」の原点。長男は現在、難病を克服して医療を志し、近所に「ことぶき接骨鍼療所」を開業している。
省策さんが趣味で描く植物画の個展で、来場者に振る舞ったケーキが評判を呼んだことから、調理師免許を取得し、子育てが落ち着いた55歳の時に、夫婦二人三脚で準備をして開店にこぎ着けた。淳子さんは「普通の主婦が人との出合いでケーキを作ることになった」と振り返る。
屋号の「まーぶる」は、省策さんがまだサラリーマンだった頃、外回りで客先の子どもらにマーブルチョコレートを配り、「マーブルちゃん」と呼ばれていたことにちなむ。
季節ごとに国産の旬の材料を使い、利平栗のモンブラン、クリームブリュレ、ショートケーキ、シフォンケーキ、かぼちゃのプリンケーキ、エゴマパウンドケーキなどを作る。イチゴも旬に限って使う。「本当に美味しくて安心な素材を大切に使う」と淳子さん。近所からの来店客は「素材が良くて、本当にどのケーキを食べてもおいしくて感動する」と話す。
「これからも味や材料にこだわって1人のお客さまでも『おいしい』『癒された』と言っていただける間は店をやっていきたい。昔ながらのおばあちゃんがやっていたような、人と人との交流の場になるようなお店にできたら」と淳子さんはほほ笑む。
工房に隣接する庭は毎年、見沼区の「オープンガーデン」に参加。コロナ禍で今年は中止を余儀なくされたが、求めに応じて省策さんが案内することも。「来店ついでに珍しい植物やキッチンガーデンも見てもらえたら」と呼び掛ける。
当面の営業時間は11時~18時(木曜・金曜・土曜のみ営業)。要事前確認。