がんの切除と人工関節の置換手術から6年間リハビリを続けているJ1大宮アルディージャのアンバサダー・塚本泰史(たいし)さんが9月4日、九州までの約1200キロを自転車で走破するチャレンジに出発した。
大勢のサポーターに見送られ1200キロの自転車旅に出発する、大宮アルディージャ・アンバサダーの塚本泰史さん
塚本さんは、大宮アルディージャのディフェンダーとして活躍していた2010年2月、右大腿(だいたい)骨が骨肉腫に罹患(りかん)していたことを発表し、3月に患部の切除と人工関節への置換手術を受けた。2012年には大宮アルディージャのアンバサダーに就任し、試合やイベント会場などでクラブPR活動を行いながら、「再びピッチに立つ」ことを目標に日々リハビリを続けている。
「入院や治療を受ける中で多くの人に応援してもらうことで勇気づけられた。併せて、同じように病気と闘う多くの人の存在を知った」と塚本さん。「応援してくれた人への恩返しと、病気と闘う人を勇気づけたい」と、2012年に東京マラソンのフルマラソン、2013年に麓からの富士山登頂、2014年に仙台までの自転車走破、2015年のトライアスロンと、さまざまな挑戦を続けてきた。
2015年は、佐賀県小城市をゴールに、約1200キロの自転車走破に挑戦した。同市は、15年前に当時中学校のサッカー部に所属しながら、塚本さんと同じ骨肉腫に罹患し亡くなった梅崎太助さんの出身地。2012年に梅崎さんを追悼するサッカー大会「三・九カップ」に塚本さんがゲストとして参加したことをきっかけに交流が続いており、2013年の富士山登山では梅崎さんがかつて使っていたつえを使って登頂を果たした。今回は大会が開催される9月11日までの到着が目標だ。
途中、がんと闘うフットサルの湘南ベルマーレの久光重貴選手や、がんを克服し現在もFリーグで活躍中のデウソン神戸の鈴村拓也選手などを訪問、激励する予定。
4日のNACK5スタジアム大宮からの出発には、早朝にもかかわらず約100人のサポーターが見送りに訪れ、塚本さんがかつて付けていた背番号「2」の旗を掲げるなど、挑戦の成功を祈った。
見送りに訪れたサポーターの一人、新田和久さんはがんサバイバー(がん生存者)の一人。「塚本さんが罹患する一年ほど前に私もがんになった。リハビリで休職中に塚本さんの罹患の報を聞き、仲間と「2」の旗を作成し、スタジアムで手術に向かう彼を送り出したことで、自分自身も励まされた。今回のチャレンジが成功することを願っている」と、エールを送った。
同じくサポーターの一人、大川明宏さんは「2010年に塚本さんが手術に向かう決意をスタジアムで報告した時に、仲間と共に「2」の旗を作った。彼が再びピッチに立つという夢に向けて挑戦を続ける限り、応援を続けたい」と語る。
塚本さんは出発に際し、「自分が病気を報告したときから、皆さんにはたくさんの応援を頂き、勇気をもらった。今回は未知の領域への挑戦になるが、感謝の気持ちを忘れずに挑戦を成し遂げたい」と決意を示した。サポーターが激励する中、塚本さんは伴走する兄の浩史さんと共に出発した。