JR東日本は10月28日、JR大宮駅でエスカレーターを歩いたり走ったりせずに、立ち止まって利用してもらうための実証実験を始めた。
場所は埼京・川越線21番線・22番線ホーム上の北側エスカレーター。AI技術を活用し、エスカレーター上を歩く人を検知して音声による注意喚起を行うほか、エスカレーター周辺の床サインやポスターを使い、「2列で」「立ち止まって」利用するよう啓発している。
実施初日の28日、エスカレーターで歩く人がいると上方に設置したカメラが検知し、スピーカーから「立ち止まってご利用ください」と注意を呼びける音声が流れた。実証実験は12月4日まで行い、効果を見ながら今後の取り組み拡大に活用していくという。
埼玉県は2021年10月1日、エスカレーターで歩かず立ち止まって利用するよう義務付ける条例を施行した。施行直後しばらくは歩く人が減ったものの、右側を歩く人用に空ける慣習は根強く残るという。JR東日本研究開発センター副主幹研究員の林英毅さんは「エスカレーターで歩行すると他の利用者や荷物と接触し、思わぬ事故を引き起こすことがある。そのため当社では、これまでもエスカレーターの立ち止まっての利用を呼びかけてきた。しかし、なかなか歩く人は減らない」と話す。
JR東日本エリアでは昨年、300件を超えるエスカレーターでの事故が発生。ひやりとしたものも含めるとさらに件数は多くなるという。「中には歩いている人が止まっている人にぶつかって突き落としてしまう危険性がある場合も」と林さん。同センターは、この危険な慣習を減らすためにさまざまな方策を検討する中、今回のAI技術を活用した実証実験に踏み切った。
注意を呼びかける音声には、テキスト読み上げソフトウエア「VOICEVOXずんだもん」を採用した。林さんは「いろいろな人が利用するため、注意されて『怒られた』という感覚を持ちにくい声がいいと考えた。ネット動画でたまたま『ずんだもん』の声を聞き、これなら多くの人に耳を傾けてもらえるかもしれないと採用を決めた」と経緯を語る。今後は利用者の反応を見ながら、より聞き取りやすいように音量や言葉を調節していく予定だという。
林さんは「誰もが安心してエスカレーターを利用できるよう、周りの人に思いやりを持って利用いただけたら」と呼びかける。