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表現の違い 障がい者アートの魅力を感じる 愛のある作品展が大宮で

吉川健司さんの作品「ソウルシンガーたち」

吉川健司さんの作品「ソウルシンガーたち」

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 「埼玉県障がい者アート企画展 ソニックブーム うふっ」が11月23日~25日の3日間、大宮ソニックシティ(さいたま市大宮区桜木町1)で開催された。主催は埼玉県障害者アートネットワークTAMAP ±〇、社会福祉法人みぬま福祉会。

グルーガンを使った野本竜士さんの作品

 今年で9回目となる同展。650人から選ばれた52人の作家による絵画、立体、手織り、コラージュなど100点以上の多彩な作品を、子どもからシニアまで幅広い年代の来場者が楽しんだ。

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 同展の作品選考には美術の専門家だけでなく、福祉関係者や教育関係者も関わる。福祉現場からの視点が加わることで作品の背景を知ることができ作品が選ばれることもあるという。今年は作家数を昨年の半分程度に絞り、その分1人あたりの作品数を増やして、作家の全体像が分かるようにした。

 24日に開催されたギャラリートークでは、同展キュレーターの中津川浩章さんと新潟市美術館館長の前山裕司さんが、50人ほどの来場者と2時間以上かけて会場内を回りながら各作品の魅力を解説。作家本人や施設職員のコメントも交えながら、作品が生まれた背景をひも解いた。

 11歳の勝山直斗さんの作品は、部屋の壁紙を剥がすことで絵が浮かび上がったもの。前山さんは「剥がして描くというマイナスの表現。初めて見た時に衝撃を受けた」、中津川さんは「こういう機会がなければ皆さんに見てもらうこともなかった」と紹介した。

 福島尚さんは、厚紙を貼り合わせて作った電車模型を出品。電車をモチーフにする作家は多い中、特に福島さんは記憶だけを頼りに制作する精緻な立体や風景画作品で知られており、鉄道博物館や川崎市岡本太郎美術館で展示されたことも。福島さんは「細かく車輪を作って整理している」と自ら制作手法を解説した。

 田中稔さんの作品は、ビニール紐を織り込んだ立体。中津川さんは「さをり織り(手織り手法の一つ)に取り組む施設はたくさんあるが、方法が同じなので表現活動だと捉えられにくい面がある。これだけぶっとんでいると作品になる」と評価する。田中さんが所属する施設の職員は「ビニール紐を織り込むには力がいるので、ゆっくりと一生懸命織っている」と創作の様子を紹介した。

 出品作品の中にはユニークな素材を使ったものも。野本竜士さんの作品は、グルーガン(接着剤)だけを重ねて作られた立体。石井健知さんは、缶から切り取ったプルトップを組み合わせて作られた「アルミ要塞」を出品した。

 前山さんは「『埼玉の作品展は愛がある』とよく言われる。普通なら問題行為と捉えられかねない振る舞いを、施設職員は表現行為と理解して尊重し、背景を知らない人にはゴミのように見える作品もちゃんと保管している。作品選考会では『これをよく取っておいたね』と驚きの声が上がることも」と話す。障がい者アートの魅力について「『こういう障がいだと、こういう表現がよくあるよね』と類型にはめて見ようとする人もいるが、その中にも違いがあり、その違いが見えてこないと面白くない。一人一人それぞれの表現を見てほしい」とも。

 今年は初めての試みとして、アートグッズの展示販売も行われた。売れ行きは好調で、特に来年のカレンダーや小物を手に取る人が多かったという。今回販売されたアートグッズの一部は、12月8日から16日まで工房集(川口市)で開催される「織り&グッズ展ツグズムズ11 うふっ クリスマスギフトにぴったりね」でも購入できる。

 社会福祉法人みぬま福祉会の中村亮子さんは「埼玉県では障がいのある方の表現活動状況調査を通年行っており、毎年新たな作家の情報が寄せられる。年によって作風ががらりと変わる作家もいて、どんな作品が出てくるか、私たちも毎年楽しみにしている。来年も開催予定なので、ぜひ足を運んでいただければ」と呼び掛ける。