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さいたま市NPO理事長が10年越しに語る 大企業不正会計回顧録「スピークアップ」

著者の中田さん

著者の中田さん

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 2005年2月に発覚した「日本IBMで発生した270億円の不正会計」について、同社に36年間勤務した元社員による回顧録にもとづく「スピークアップ - 日本IBM不正会計二七〇億円『事件』回避の記録 -」(三恵社)が12月26日、出版された。

中田さんと古川さんと甚川さん

 執筆者の一人で現在は認定NPO法人市民後見センターさいたま(さいたま市浦和区針ヶ谷4)の理事長を務める中田均さんは、当時同社でネットワーク事業部に勤務しており、不正を内部通報した本人。不祥事回避後、事の成り行きを記録しようと文書を執筆したが、当時は関係者が多く在籍中であったため、公開を見送った。

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 当時から10年以上たった今、昨今の企業のコンプライアンス違反などの報道を見て、「やはり世に問いたい」という気持ちを持つに至ったという。中田さんによると、当初の執筆の際に、当時の同社幹部に記載内容について確認し、了承を受けている。

 タイトルは、企業が内部通報の専門窓口を設け、通報者を保護しつつ通報内容について当該の部署や担当者から回答を得る仕組みである「スピークアッププログラム」に由来する。当時、中田さんはこの制度を活用し、社の上層部の関心を喚起した。

 中田さんは「コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス、モラルと、自ら考えるよりどころとなる基準があれば、一社員でも多額な不祥事を回避できることを示した実例。品質の根本的責任は社長にあることの事例も提示している」と話す。

 共著の古川晶子さんは、2013年に設立したさいたまキャリア教育センター(さいたま市中央区新都心2)の代表理事を務める。同センターの活動を通じ知り合った中田さんに依頼され、主に外部の人間には分かりにくい点や専門用語などを一般の人にも分かりやすくするよう加筆。解説は、企業の不正調査・監査やリスクマネジメント業務を長く務め、現在は忍者を職業とする甚川浩志さんが担当した。

 古川さんは「コンプライアンスに関しては、いつ誰が当事者になってもおかしくない状況。本書によって基本的な知識や身を守る方法などを学んでもらえたら」、甚川さんは「社内の不正に光を当て、しっかりと向かい合う仕事は、決して後ろ向きではなく、企業の健全な成長になくてはならない業務であるということも知っていただけたら」と話す。

 中田さんは「現在より重要性を増している企業コンプライアンスの問題について、当事者となった時、どのように関わるかを考えることができる内容となっている。経営者・社員・その他、組織に関わる方には全て読んでほしい」と呼び掛ける。

 価格は単行本=1,944円、Kindle版=1,728円。