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大宮の老舗天ぷら店「小峰」80年余りの歴史に幕 年が越せないと嘆く声も

訓子さんとの会話も楽しい

訓子さんとの会話も楽しい

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 大宮駅東口の銀座通りにある老舗天ぷら店「小峰」(さいたま市大宮区宮町1)が5月15日で閉店する。

オリジナル人気メニュー「ウィンピー」も(関連画像)

 昔ながらの天ぷら店として地域に親しまれていた同店。小峰さん夫妻が長年営業してきたが約1年半前に夫の清さんが急逝、以来訓子さんが一人で切り盛りしてきた。

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 夫の清さんのご両親が、戦後の食糧がない時代に「おいしいものを食べてもらおう」と開業。以来同じ場所で変らずに営業してきた。「いつ開業したかは聞いていないが、私が群馬から大宮に嫁いできて来年で60年になるから、もう70~80年は営業しているんじゃないか」と話す。

 さつまいも、かぼちゃ、なす、しめじ、玉ねぎ、しゅんぎく、など季節の野菜とちくわ、あじ、いかなどをそろえる。会津から取り寄せる菜種油を使って揚げ、冷めても衣がカラりとしている。「ここの天ぷらは食べた後も胸やけがしないと常連さんに言っていただけるのは油が秘訣(ひけつ)かもしれない」と訓子さんは話す。

 ウインナーとピーマンを合わせたオリジナルメニューの「ウィンピー」も人気。「うちの子はピーマンが食べられなかったんだけど、ウィンピーを食べてから好きになった」と言われたこともあるという。

 夫婦で朝から晩まで毎日天ぷらを揚げてきた。開業以来建て直していないという昔ながらの店舗。天ぷら油をあおると危険なため、風がある日は窓を閉め、夏でも小さな扇風機しか使えない。訓子さんは「天ぷらを揚げるのは重労働」と汗を拭う。それでも、70代後半まで、自宅から店舗まで6キロほどの距離を自転車で通っていた。「テレビで密着取材してもらったこともある」とうれしそうに振り返る。

 「小峰の天ぷらと年越しそばで年を越したい」と年末の数日が一年で最も忙しい時期になり、通常の10倍以上の客が来る。昼食を取る暇もなく、店に立ち続ける小峰さん夫妻を見かねて、常連の客は軽食の差し入れをした。「手を止める暇もないから、『ほら、食べな』って、口に入れてもらったりした。お客さんや地域の人、友達みんなに助けてもらった。みんな優しいね」と訓子さんはほほ笑む。

 訓子さん一人になってからは、友人が店を手伝ってくれた。「皆に助けてもらいながら続けてきたが、私ももう82歳。最近は2日営業したら3日疲れて休んでしまうくらいだった。それでも来てくれるお客さんのためにも、もうしばらく続けられるかなと思っていたが、年末に体調を崩して、周りにも心配をかけた。残念だし、お客さんに会えなくなるのは寂しいが、60年間ずっと天ぷらを揚げてきたので、少しは自分の時間を持ってもいいのかなと思い切って辞めることにした」と訓子さん。「浅草が好きなので、友達と出掛けたい。スカイツリーが好きで3回も登ったことがある、また行こうかな」と笑顔見せる。

 営業時間は10時ごろ~天ぷらがなくなるまで。

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