大成八幡神社(さいたま市大宮区大成町1)で7月30日、大成町1丁目八幡自治会の夏祭りが4年ぶりに通常開催された。
15時に大人みこし、子どもみこしが境内から出発すると、続いて山車が引き出され、途中4度の休憩を挟みながら約4時間かけて町内を渡御した。
八幡神社副講長の臼井光義さん(79)は「夏祭りの起源は、豊作を願って夏季に行われていた『雨乞い神事』にある」と話す。神社は1390~1394年ごろの創建と伝えられる。「いつの頃からみこしを担ぐようになったのかは不詳だが、現在の大人みこしは1923(大正12)年に建立されたもので、それ以前は白木で作ったみこしを担ぎ手が互いにぶつけ合う『けんか祭り』のような形態だったと聞いている」と臼井さん。みこし渡御は第二次世界大戦によって中断した後、1947(昭和22)年に町内の夏祭りとして復活した。
大人みこしは40~60人、子どもみこしは十数人で担ぐ。担ぎ手たちは汗をかきながら、威勢のいい掛け声と共に町内を巡った。神輿会の高橋昇正会長は「気温も相まって熱い祭りになった」と話す。
山車でおはやしを乗演したのは深川流大成一丁目囃子(はやし)連。町内では山車を「屋台」と呼ぶ。「大成一丁目のおはやしは江戸の中期ごろ、富岡八幡宮(通称「深川八幡宮」)が鎮座し祭りが盛んだった東京都江東区深川から当地に伝えられたと資料に書かれている」と同連の矢部正明さん。
5年前から囃子連に参加している大成小学校の湯沢咲希さん(6年)、望結さん(6年)、遥さん(4年)姉妹は太鼓を担当した。屋台で乗演するのは今年が2回目で、9曲を演奏できるという。「覚えるのが大変」「リズムを取るのが難しい」と言いながらも、「また来年もやりたい」と元気いっぱい。1年前に囃子連の演奏を見たことがきっかけで、今年初めて参加したのは4歳の笠井夕愛さん。2カ月前から週2回の練習に参加し、太鼓を担当した。「初めて屋台の上で演奏できて楽しかった」とはにかむ。
同連会長の森角邦大さん(85)によると大成一丁目のおはやしはテンポがゆっくりしているのが特徴。「子どものうちに伝統芸能に触れ、記憶として残してもらうことができればと思い指導している」と話す。
祭り終盤、町内を流れる切敷川に架かる神明橋の上で「みそぎの儀」が行われ、代表者らによる玉串奉典、神酒拝載の後、清めの酒が川に流された。神道修成派大成大教会神職の内田雅明さんによると、みそぎの儀には、町内を巡行して集めた罪やけがれを、最後に川に流すという意味合いがあるという。
一帯に田園が広がっていた当時、切敷川は農業用水の貴重な水源でもあったが、度々氾濫も起こした。臼井さんや森角さんらは子どもの頃、川で泳いだりシジミを取ったりして親しんだという。「けんか祭りの形態だった頃は、最後にお清めとしてみこしを川に流していたので、それがみそぎの儀の由来では」と臼井さん。
小野安史自治会長は「経験したことがないほどの暑さの中、4年ぶりに町内挙げての夏祭りを開くことができた。休憩所の手伝いをしてくれた自治会員を含め総勢400人ほどが参加してくれ、子どもたちの元気な姿を見ることができて良かった。楽しい思い出として皆さんの記憶にとどめてもらえれば」と話す。