山本彌(やまもといよ)さんの展示「わたしたちの種」が現在、大宮門街(大宮区大門町2)5階・レイボックホール情報発信コーナーで行われている。「さいたま国際芸術祭2023」のプログラムの一環。
山本彌さん(左)とさいたま国際芸術祭実行委員会事務局の井上楓菜さん(右)
多摩美術大学でテキスタイルを学んだ山本さんは28歳の時に病気で死を意識した経験から、「植物や菌類の生命力に勇気をもらいオブジェの制作を始めた」という。これまでに作品はセレクトショップや書店のディスプレー、見本市のメインビジュアルとして採用されている。作品制作の傍ら、子どもを育てながら近所の公園でプレイパークを主催するなど、地域の子どもたちの遊び場づくりにも取り組む。
さいたま市で3年に1度開催されている「さいたま国際芸術祭」は市民、アーティスト、地域が交流し、「共につくる、参加する」市民参加型の芸術祭。「わたしたちの種」では7月から市民にニットの提供を募り、9月23日にプレイベントとして「未来の種をつくるワークショップ」を開催した。
ワークショップではニットの毛糸を18人の参加者がほどき、糸に戻していった。山本さんは「提供されたニットは子どもや親の着ていた古着のニット、手編みも機械編みもあり、さまざまな時代の『使っていないけれど手放せないもの』があった。糸が簡単にほどける箇所もあれば、なかなかほどけない箇所もあった」と話す。参加者の年代も性別もさまざまで、ニットの解体に黙々と熱中する人もいたという。
ワークショップで制作した「未来の種」は、参加者が「未来に遺したいもの」を紙に書いて、ほどいた毛糸でぐるぐる巻き、思い思いの形で作った「種」。山本さんは「種を見てその時の『自分自身が大切にしたいことって何だろう?』と心を見つめた思いを記憶してほしい」と話す。
展示では、市民から提供されたニットをほどき、「ヘアピンレース」というかぎ針とUピンのような形状の器具を用い、山本さんがインスタレーションに使う「種」を作り、会場に配置した。
山本さんは「これまでは作品は一人で制作してきたが、地域の方々と関わり作ることで表現の幅が広がった。見に来て何かを感じてもらえたら」と呼びかける。
開催時間は9時~22時。閲覧無料。12月10日まで。