
開館5周年企画展「おいでよ!にんぱく動物園~かわいいどうぶつ大集合~」が現在、岩槻人形博物館(さいたま市岩槻区本町6)で開催されている。
日本初の公立の「人形専門博物館」として2020年2月に開館した同施設。所蔵品としては、人形玩具研究家、日本画家として活躍した西澤笛畝さんのコレクションを中心に、5500件以上の人形関係資料を収蔵し、年に4回ほどの企画展を行い順次紹介している。
今回は犬や猫、ウサギなど動物をモチーフにした人形や玩具を集めて展示。張子の表面に絹糸を貼り付けて動物の毛並みを表現した「毛植人形」、色鮮やかな吉祥模様が施され、武家や公家などの上層の人々が遊んだ「御殿玩具」、日本各地で作られ、信仰や暮らしに根付き庶民に親しまれた「郷土玩具」の三つのジャンルに分けて、各ジャンルの特徴を解説している。
同博物館の学芸員、矢島璃子さんは「夏休み中の子どもたちにも気軽に楽しんでもらえるように、今回は当館の動物コレクションの中でも特にかわいらしさに重点を置いて人形をピックアップした。見る角度によって表情が変わる猫や、縁起の良い文様が描かれた犬もいるのでじっくり鑑賞してみてほしい。アーチや足跡マークなど動物園らしい装飾も見どころ。小学生は会場で配布しているワークシートの利用で観覧料が無料となるので、夏休みの自由研究にも役立ててもらえれば」と来場を呼びかける。
江戸時代より「けうゑや」の屋号で知られた毛植人形の名店「並河人形店」の虎も展示している。同店の閉店により高度な毛植技術が途絶え、国内外で高い評価を得ていた人形をどのように作っていたかは不明となっている。現在では再現不可能な技術で作られた人形を間近で鑑賞することができる。
アジアとヨーロッパで作られた人形も展示している。矢島さんは「熱帯地域であるタイでは爬虫類が多く生息しているため、他の地域では珍しいカエルやヤモリの人形も作られている。古くから工業が発展していたドイツでは、高度な技術を用いて首や足などを自由に動かせる人形が作られている。同じ象のモチーフでも、タイでは身近な動物としてリアルに表現されている一方、ドイツ製のものは、1枚の金属板を変形させ、形を簡素にまとめてかわいらしさを出している。人形を通して各地の風土や背景の違いも感じてほしい」と話す。
開館時間は9時~17時。入館料は、一般=300円、高校生・大学生・65歳以上=150円、小中学生=100円。9月7日まで。月曜休館。