大宮出身の近代漫画の祖といわれる北沢楽天(きたざわらくてん)の人生を描く映画、イッセー尾形さん主演「漫画誕生」のキャストが4月17日、発表された。
北沢楽天生誕140周年、さいたま市立漫画会館開館50周年を記念して企画された同作品。イッセー尾形さん演じる楽天の妻・いのをタレントとして幅広く活動する篠原ともえさん、若き日の楽天を橋爪遼さんが演じるほか、モロ師岡さん、稲荷卓央さん、お笑いコンビのさらば青春の光、声優の緒方賢一さんという多彩な顔ぶれがそろい、秋月三佳さん、嶺豪一さん、新井美羽さんら若手俳優たちが出演する。
撮影は髙間賢治さん、監督は2014年に長編「花火思想」(2014年公開)でデビューした大木萠さん。脚本はEテレやBSジャパンの番組構成の実績もある若木康輔さんが務める。
楽天は1876(明治9)年、現さいたま市大宮に生まれ、外国人向けの英字新聞社に入社し西洋漫画の手法を学んだ。当時は評価の低かった風刺画を「近代漫画」として確立させ、「時事漫画」の執筆や漫画雑誌の創刊に尽力した。日本の近代漫画の先駆者として活躍したものの、時代の瞬間を切り取る「風刺画」というジャンルのため作品が残りにくく、近代までその功績が忘れられていた漫画家だった。
さいたま出身在住の漫画家で、北沢楽天顕彰会の理事を務めるあらい太朗さんは「さいたまの人にも知られていない楽天をどう知ってもらうかを会の設立以来考えてきた。映画化ができればと切望していたところ機会が巡ってきた。予想以上に大きなプロジェクトとなったことに感動しつつ、関わる皆さまに感謝している」と話す。「イッセーさんが本当に楽天にそっくりで、まるで楽天先生に会っているような気がする。この役を引き受けてくださって本当にうれしい」とも。
撮影はさいたま市内で進められている。プロデューサーの加瀬修一さんは「今日のロケ地は岩槻区にある築170年以上の古民家で、持ち主の厚意で使わせてもらっている。監督が建物の雰囲気を生かしたシーン作りを進め、とてもいい撮影ができた」と話す。
フランス少年の子役を演じた新井美羽さんは「イッセーさんはアドリブの駄じゃれをたくさん言っていて面白かった。他の人たちも優しく話しかけてくれて緊張がほぐれた」と笑顔で話した。
監督の大木さんは「楽天そのもののようなイッセー尾形さんの芝居も見どころの一つで、それを支えた妻・いのを演じる篠原さんは20代から60代までという幅広い役どころを演じ、楽天を支えた妻として映画の一本の柱となっている。さいたまの人には見たことある場所が多いと思うので、完成・公開を楽しみにしていてほしい」と話す。
撮影中の食事は、地域の人、食堂、パン店などが差し入れをして支えている。特製カレーの差し入れをした大宮の酒味処「串八丁」の古川弘一さんは「良い緊張感がある現場で皆さんが頑張っているので、できることで協力している。皆さんに喜んで食べてもらえてうれしい」と話していた。
同作品は年内の完成、2018年初夏の劇場公開を予定している。