バングラディシュの農村の女性を支援するプロジェクト「サクラ・モヒラ」(さいたま市大宮区大門町3)が支援する現地の女性が製作した「刺しゅう」のタペストリーが、第42回埼玉女流工芸展で入選した。
大学でビジネス英語の講師などを務めていた平間保枝さんが知人の元在日バングラディシュ大使のハクさんとともに約25年前に立ち上げた同プロジェクト。平間さんは「まさか自分がこんなことをするとは思ってもいなかった」とほほ笑む。「モヒラ」はベンガル語で「女性」を意味する。
バングラディシュの首都ダッカから南の方向に約135キロの距離に位置するナラヤンプール村を支援する。首都ダッカから車で約4時間、人口約5000人、住人の多くは農業を営む農村。ハクさんの親戚が住んでいた縁で同村に関わることになったという。
学校を建て、教師を雇い、文具を寄付するなど、教育の場を整えたほか、「土地・家・夫のいない女性たち」をグループにし「互助会」を設立、自立できるよう支援した。平間さんは「自分でビジネスもしたことのないまま、目の前の問題を自分なりに工夫して乗り越えていった。意思の疎通、文化の違い、資金のやりくりなど大変なことも多かった」と話す。
「縫製のプロジェクト」として、村の女性10人ほどに布小物の制作を依頼し、日本で販売もしている。平間さんは「最初は本当に大変だった。頼んだ品が日本に送られてきても、段ボールを開けるのが怖くて1週間放置していたこともあった。やっとの思いで開けてみると、案の定ひどい品ばかりで笑うしかなかった」とほほ笑む。農作業の合間に作業するため、届いた製品が泥まみれでよれよれだったこともあるという。「丁寧に洗濯して、アイロンかけて、販売できる状態にした」とも。今では、女性たちの技術も意識も向上し、「荷物が届くのがとても楽しみ」という。
今回入選したFatema Begum(ファテマ ベガム)さんは、平間さんから刺しゅうのトレーニングを受けている一人。平間さんはダッカに借りている一軒家に、年3、4回10日間ほど訪れ、村から呼び寄せた縫製プロジェクトのリーダー3人に指導している。今回、工芸展の作品公募を知った平間さんが、ファテマさんに連絡し、1カ月くらいかけて仕上げたという作品は、カディコットンという「手でつむぎ、手で織った」バングラディシュの伝統的な綿に、伝統的な刺繍を丁寧に施したもの。「南国の花」「オリエント」と題した2つの作品が入選した。
埼玉県女流工芸作家協会会長の滝沢布沙さんは「南国の花を思わせる柄が素晴らしい。丁寧な手仕事が評価され入選した」と話す。
平間さんは「柄や色使いもすべてファテマさんに任せた。こんな素晴らしい作品を作れるようになり本当にうれしい。本人にも電話で伝えただけだが喜んでいた。どんどん世界に広めて、彼女たちに自信を持たせたい」と意気込む。