「さいたま市岩槻人形博物館」(さいたま市岩槻区本町6)のメディア向け内覧会が1月21日行われた。
実際は数センチ角の囲碁版、将棋盤の上に、碁石、駒もそろっている。非常に精密に作られたひな道具。
ひな人形をはじめとする人形工房が多くあり、「人形のまち」として知られる岩槻に2020年2月22日、日本初の公立「人形専門博物館」としてオープンする同館。鉄筋コンクリート1階建てで、延べ面積は2029.07平方メートル。うち3分の1が展示室、残りがミュージアムショップ、カフェ、収蔵室など。ガラス張りの明るいロビーは、常設展示の展示室1、展示室2、企画展示の展示室3へとつながる。
展示室1は「埼玉の人形作り」をテーマに岩槻を中心とした人形作りについて、実際の人形作りの道具や製作過程の展示、職人による人形製作の様子を映像で流す。
展示室2は収蔵コレクションを展示する。オープン当初は、節句人形を中心に、ひな人形では江戸時代の有職びな、享保びな、芥子びなを展示するほか、八人雅楽、銀製ひな道具、11代将軍徳川家斉の娘が所有していたとされる紫檀象牙細工蒔絵雛道具など貴重な品を展示する。同館では、人形玩具研究家・日本画家として活躍した西澤笛畝さんのコレクションをメインに、5000点以上の人形関係資料を収蔵しており、常設展では少しずつ展示内容を変えて紹介していく予定という。
展示室3は、年4回の企画展を予定しているほか、それ以外の期間にもミニ展示などを行う予定。オープン後は、開館記念企画展「開館記念名品展」を3期に分け開催する。第1期は2020年2月22日~4月12日、「開館記念名品展Ⅰ ひな人形と犬筥(いぬばこ)・天児(あまがつ)・這子(ほこ)」を予定している。
同館にはそれぞれ専門の異なる4人の学芸員を置く。学芸員の一人は「ぞれぞれの知識を生かし、皆さまに見ていただきやすく、人形への負担を減らす展示を工夫している」と話す。特に、照明が特徴的で、顔にほんのりとやわらかい光のスポットライトを当て、人形の保護のため照明がやや落とされた展示室でも、人形の表情がよく見えるようにしているという。「特に子どもたちにも楽しく見てもらえるようにしている。事前に授業の一環で人形を披露する機会があったが、人形を見慣れない子どもたちの中には怖がっている子もいたので、人形本来のやさしい表情が見えるよう照明の当て方を工夫している」とも。
さいたま市の小学校では、社会科見学で岩槻区の人形工房などを見学することも多い。今後は、同館も郷土学習のプログラムとして何らかの協力をしていくことを予定しているという。
林宏一館長は「素晴らしいコレクションを見ていただきたいとの思いで2009(平成21)年から準備を進めてきた。人形を寄贈してくださった方、岩槻人形協同組合、地域の皆さまのご協力があり、ようやく開館の運びとなり感慨深い。ぜひ多くの方に楽しんでいただければ」と呼び掛ける。
同館敷地内には「にぎわい交流館いわつき」も併設する。岩槻の歴史や文化発信、産業や観光PRの拠点として、土産を扱うショップ、岩槻特産品を使ったメニューを提供するカフェを営業するほか、ワークショップやクラフトルームでものづくり体験などの企画を展開する。
開館時間は9時~17時。月曜休館。入館料は、大人=300円、高校生・大学生・65歳以上=150円、小中学生=100円。