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伊奈町で梨の「花粉銀行」 今年は寒気の影響で例年より遅い実施に

前日に花粉銀行に預けた花粉を引き取りに来た梨の生産者

前日に花粉銀行に預けた花粉を引き取りに来た梨の生産者

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 梨の「花粉銀行」が4月2日から数日間、行われた。主催はJAさいたま伊奈支店管内の伊奈梨出荷組合(伊奈町)。

朝に摘み取り花粉銀行に預けられた葯(やく) 脱穀前

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 春に咲いた梨の花を摘み取り、花の「葯(やく)」を生産者から預かり、脱穀機にかけてごみを取り除き、トレーに広げる。「開葯室(かいやくしつ)」で25度位の一定の温度で除湿しながら加温し、一昼夜交代で管理。葯を開かせ、吹き出した花粉を取り出して引き取りに来た生産者に戻す。梨の栽培で一番大事な作業であり、梨の実の出来の善しあしが決まる。この事業を「花粉銀行」という。

 葯は、雄しべの先の花粉が作られる袋状の器官。梨は効率よく結実させるために人工的に花粉を授粉させる。花粉銀行は人工授粉の安定化と、梨農家の花粉採取の負担軽減のために毎年行う季節行事となっている。伊奈町で栽培されている梨は全て地元で作られた梨の花粉で人工授粉している。

 埼玉県南東部に位置する伊奈町は大宮台地のほぼ中央に位置する。大宮台地は富士山などの噴火で火山灰が降り積もってできた関東ローム層から成り、畑作や梨の栽培に適した土壌となっている。1965(昭和40)年ごろ伊奈町で梨作りが始まり、1972(昭和47)年に梨選果所ができ、その後に花粉銀行の取り組みが始まって50年ほどがたつ。組合員の参加者は「花粉銀行ができるまでは、各農家がカーペットや電球で梨の葯を加温して開き、花粉を出していたため大変な作業だった」と当時を振り返る。

 甘くみずみずしい中玉の「幸水(こうすい)」や、シャキシャキした食感の大玉の「新高(にいたか)」は伊奈町のふるさと納税の返礼品にも選ばれ、全国に知られるようになった。今回の花粉銀行では主に「新興(しんこう)」の品種の花粉を取り出した。梨は自分の花粉では結実しない。新興の花粉は他のどの品種の梨とも交配できる。農家では湿気の少ない天候の良い日に、梨の花に人工授粉を行う。

 埼玉県農林部埼玉農林振興センターの石井諒平さんは寒天の培地に花粉を落としたシャーレを、25度で2時間ほど加温した後、顕微鏡で観察し、花粉管の伸びた花粉の数を数えて発芽率を計算した。発芽率が70%を超えていれば梨の結実も良い結果になると予測できる。

 花粉銀行には前日に葯を預けた農家が自分の花粉の包みを引き取りに次々と訪れていた。花粉の発芽率を見ながら、「今年は天候が安定しなくて大変。いつ人工授粉して交配させようか」と相談し話し合う声も聞かれた。

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