見る・遊ぶ

大宮で映画「沼影市民プール」先行上映 都市開発の裏で迎えた最後の夏

(左から)出演者の阪崎さん、太田監督、竹中プロデューサー

(左から)出演者の阪崎さん、太田監督、竹中プロデューサー

  • 0

  •  

 太田信吾監督作のドキュメンタリー映画「沼影市民プール」の地元特別先行上映会が8月8日~10日の3日間、ミニシアター「OttO(オット)」(さいたま市大宮区桜木町1)で行われ、連日満席となった。製作は一般社団法人「ハイドロブラスト」。

昭和の「沼影市民プール」写真

[広告]

 今回の上映会は、同館スタッフの藤村公洋さんが携わるラジオ番組に太田監督が出演したことがきっかけで実現した。「完成したら恩返しの意味も込めて、さいたま市で上映したいと考えていた」と太田監督は話す。

 太田監督はさいたま市出身。「生と死」「心のケア」をテーマにした映像作品を撮り続けている。同作は、作中にも登場する弁当店「本家かまどや」(浦和区)に勤める友人から「子どもの頃に通った市民プールが、小中一貫校新設のために閉鎖される」と聞いたことをきっかけに企画。「さいたま国際芸術祭2023」の公募プログラムとして市民の協力を得ながら製作し、参加者向け試写会後に行った追加撮影・再編集を経て、今年6月にニュージーランドのドキュメンタリー映画祭「Doc Edge(ドックエッジ)」で世界初上映された。

 各回上映後には太田監督と出演者によるアフタートークが行われた。8日は元沼影市民プール所長の會田孝志さん、9日は同プール前の駄菓子店「いせき」の森田誠さん、10日は同プールを練習拠点にしていた「スイムチームZero(ゼロ)」の大倉紀子さんが、それぞれ登壇。本編の「第5章 受容」に出演した森田さんは「閉鎖が決まったのは、主に店を切り盛りしていた両親に病気が見つかり、店の今後を考えていた時期でもあり、頃合いだとすんなりと受け入れられた。プール営業中は忙しく閉鎖を惜しむ余裕がなかったが、こうして映像に残してもらえてありがたい」と話す。

 同作に出演したスポーツインストラクターの阪崎義勝さんは「このプールは県内インストラクターの代表的な研修地で、閉鎖を伝えると皆、驚いていた。仲間とくだらない話をして、『またここで会おう』と約束していた」と振り返る。太田監督は「建物や公共施設が取り壊される出来事は、愛着を持つ人にとって他者の死に匹敵する影響を与える。世界各地で同じことが起きているが、住民への心理的ケアを踏まえた都市開発の重要性に気付いてほしい」と話す。

 同プール跡地の近隣に住む60代女性は「タイトルを見て、見てみたいと思い来館した。章立ての構成が素晴らしく、このプールが解体された事実をすっと受け入れられた。自分が大病を患ったときのこととも重なった。ドキュメンタリー映画で涙するとは思わなかったが、こうやって映像に残ったことに涙が出た」と振り返る。大宮区在住の70代女性は「『みんなの場所』がなくなることを柔らかく描いていて、優しい気持ちになった」と話していた。

 来年夏、全国ロードショー予定。

エリア一覧
北海道・東北
関東
東京23区
東京・多摩
中部
近畿
中国・四国
九州
海外
セレクト
動画ニュース