さいたま市中央区の料亭「二木屋」(中央区大戸4、TEL 048-825-4777)で9月18日、毎年行われている「薪能」の初日の公演が行われた。
幻想的な雰囲気の中で行われる料亭「二木屋」の薪能(関連画像)
今年で17年目、76回を数える同店の薪能。国の有形文化財に指定されている同店の建物に囲まれた庭は、住宅街の中にありながら、別世界の雰囲気を醸し出す。
オーナー小林玖仁男さんと古くから交流のあった金春流能楽師の芝崎眞理さんが、小林さんが同店の営業を決めた時に、庭を見ながら「能の舞台にぴったりなのでぜひ行ってほしい」と勧めたことから薪能が実現したという。
演じる能楽師のメンバーは初回から17年間1人も変わっていない。狂言は大藏流の大藏吉次郎さん・教義さん親子、能は金春流の座・SQUAREの若手能楽師4人。芝崎眞理さんはせりふを謡(うた)う地謡を務める。今年は半能「加茂」、狂言「魚説教」を上演する。
この日のシテ(主役)を務めた山井綱雄さんは「薪能は、主に街の観光協会や行政、あるいは神社などが主催して行うことが多い。料亭で行うことは少ない上に、こちらではそれを17年の間続けている。しかも、演じるメンバーが初めからずっと変わらないのは非常に珍しく、演じる側としてはご縁を大切にしていただける気持ちがうれしく、より一層の気合が入る」と話す。
「こちらの舞台ほど客席との距離が近いところはまずない。本物の松を背景にした京間3間(約6メートル四方)の舞台がまきの炎に照らされて浮かび上がる様子は幻想的」とも。
演目は毎年変わり、4日間の公演でシテ方が毎日変わる。同店マネジャーの森田まり子さんは「毎年見に来てくださる常連さんも多い。お気に入りの役者さんの日めがけて予約を取る方、4日間のうち2回足を運んでくださる方など熱心な方も。一方で、初めて見てくださり感激する方もいる」と話す。
山井さんは「能は確かに難しいところもあるかもしれないが、感じたままに理解すればよく、どう解釈するのもそれぞれの自由。これだけの至近距離で舞台を見られるのは本当に貴重なので、ぜひ足を運んでいただければ」と呼び掛ける。
公演は9月22日・23日・24日。開場18時10分、開演18時40分。観能、「能仕立て」の特別会席、1ドリンク付きで1人2万8,000円。要予約。