さいたま榎本農園(さいたま市西区飯田新田)が経営する「農家レストラン菜七色(なないろ)」(同)で4月15日、食と農と音楽のコラボイベント「第1回 ベジ茶ブルライブ in 菜七色」が行われた。
400坪のハウス2棟でのトマトの生産・加工・販売を中心に、農家レストラン、体験農園、新規就農のコンサルなど多彩な展開をしている同農園。代表の榎本健司さんは「農業をかっこいいと思ってもらいたい」と5年前に継いだ同農園で「都市農業の可能性」を広げている。
榎本さんは「最近の農業は生産に加え、6次化ということで加工販売を自ら行う農業者も増えている。私はさらにその先の農を使っての体験イベントなどを行い、『生産+α』を実践していきたいと常に考えている。今まで子ども向け体験イベントなどが中心だったが、新しい取り組みとして今回のイベントを企画した」と話す。
会場の農家レストランは、榎本さんの実家を改装したもの。古き良き日本家屋に、柱時計が時を告げ、実家にいるような居心地を感じてもらえるようにした。榎本さんの農業仲間を中心に、地域の人約20人が集まった。
イベントは、川口市出身で茶ムリエでもあるシンガー・ソングライターの石野ゆう子さんによる「お茶のレクチャー」、同農園の採れたて野菜を使った「たっぷり野菜の食事」、石野さんによる「ライブ&歌唱指導」と盛りだくさんの内容で行われた。
お茶のレクチャーでは、石野さんが観光大使を務める京都府和束町のお茶を持参。低温で丁寧に入れられたお茶に参加者から「まるでだしを飲んでいるようなコクがある」と驚きの声が上がった。お茶を入れ終えた茶葉をポン酢で食べるなど、お茶を丸ごと堪能した。緑区でジャガイモなどを生産する鈴木伝一さんは「農家は作業の休憩時間にお茶を飲む。いつものお茶がこんなにおいしく飲めて、生産者や日本の心が伝わってきた。都市農業のこれからは生産物そのものに加え、農業の景観も一緒に伝えていく必要があると思う」と話す。
ランチは、野菜をふんだんに使ったおかずに、朝採れのたけのこご飯、同農園の新鮮野菜のサラダが食べ放題と農家レストランならではのメニューだった。
ライブでは、石野さんが洋楽、演歌のほか、和束町の歌「天空の言の葉」を披露し、ワンポイント歌唱レッスンでは参加者も一緒に声を出した。石野さんは「食も音楽も人を笑顔にする力がある。参加者と近い距離で皆さんの顔を見ながらお茶を楽しんで、歌を届けることができたと思う」と喜ぶ。イベント共催者で千葉県松戸市で農業をしながら「音楽と野菜とレストラン」の活動をする武井敏信さんは「業種を越えてみんなが活躍できる場を今後もつくっていきたい」と話す。
榎本さんは「このようなイベントを通じて農業の新たな形を示せることがとても価値のあることだと感じているし、私自身も楽しめた。さいたま市は都市農業なので、消費者との距離が近いことを武器にして、新たな試みを農家仲間と共にどんどん仕掛けていきたい」と意気込みを話す。
5月3~5日に同農園で「トマト狩り」と子ども向けイベントを行う予定。詳細は後日サイトで確認のこと。