「手打ち蕎麦(そば) こだち」(さいたま市中央区円阿弥1)がオープンして、2カ月がたった。
一品料理「青唐辛子みそ」には、油で揚げたそばの実をあしらい風味と食感を足すひと手間も
和食料理人として大阪のホテルで10年、京都の料亭や料理旅館で4年修業を積んだ川上光典さんが店主を務める。すしや懐石料理など、高級な和食を中心に腕を磨いてきた川上さんは、独立を現実的に意識し始めた時期に、「『高級かどうか』や『見た目の美しさへのこだわり』よりも、お客さまに身近なジャンルを入り口にした店を開きたい」と思い、10年ほど前、本格的にそばの道へ進んだという。2店舗で修業した後、2021年7月6日に川上さん夫婦の地元でもあるさいたま市で店をオープンした。
同店のそばには、北海道音威子府(おといねっぷ)のそば粉を使っている。川上さんは、「そばの実の皮まで一緒にひいているため、麺が黒っぽい色となるのが特徴。周辺の店にはあまりない、個性的な見た目と少し癖がある味わいが気に入りこのそば粉を選んだ」と説明する。そばは川上さんが毎朝5時から仕込む。川上さんは「温度や湿度が同じでも、季節や時間帯などによってそば粉の状態は変わる。デジタルな温湿度計では測り切れない部分を、自分の経験と感覚で調整して仕上げている。作業場も日光や湿度に過度に左右されないよう、窓を小さめに設計するなど工夫した」と話す。
「初めてのお客さまや若い人も入りやすい雰囲気」を目指し、入り口には外から店内の様子が見えるガラス戸を設置。店内の窓から近隣の林や畑を眺めながら食事を楽しむことができる。メニューは「海老(えび)天せいろ」(1,400円)、「そぼろ」や「鴨(かも)ロースト」など6種類のトッピングから選べる「小さいごはん」と「せいろ」のそばをセットにしたランチセット(1,200円)、「つけとろろ」(1,100円)などが人気だという。一品料理として「青唐辛子みそ」(350円)や「蕎麦豆腐」(600円)などもそろえる。
川上さんは「これまでは自分のために料理を作ってきたが、これからは自分が積み上げてきたものを発揮しながら、世の中の役に立てたら。コロナ禍で外出が難しいからこそ、この空間が『おいしかった』『気分転換できた』と思ってもらえるような空間になればうれしい」とほほ笑む。「この店は『そば屋』というスタートだが、それを一つの入り口に、ゆくゆくは一品料理やすしなど、ニーズに応えたメニューをより幅広く充実させていきたい」とも。
営業時間は11時~15時。木曜定休。