さいたま市中央区の区役所前(中央区下落合5)に展示してあるSLが老朽化のため撤去されることとなり、解体作業が始まった。
解体作業が始まるため、囲いに覆われた中央区役所前の9600型貨物用蒸気機関車(関連画像)
長きにわたり区役所前に展示されていた同SLは、1920(大正9)年に川崎造船所で製造された9600型 貨物用蒸気機関車。1971(昭和46)年まで稼働し、1971(昭和46)年に引退。1972(昭和47)年に与野市役所へ寄贈され、以来44年間区役所の前に展示されていた。
車両名称は、蒸気機関車39685、通称「キューロク」。小さめの車輪に大きな黒いボイラー、貨物用でけん引力が強かったことから、「甲虫(かぶとむし)」と呼ばれ市民に愛されてきた。
以前は運転席横にはしごがあり自由に出入り、遊べるようになっていた。アスベスト問題が発覚し、2005年に調査を実施、2006年に同物質の封じ込め作業がされてからは、立ち入れないようになった。
旧国鉄職員OBを中心に、年2回ボランティア活動による清掃・整備が24年間行われていたが、高齢化により1996年に終了している。ここ数年外観の傷みが目立っていたことから、調査を行ったところ、老朽化が著しく、倒壊の危険もあることが分かり、解体処分が決まった。
「小さいころ運転席で友達と遊んだ」「中学生のころは夕暮れからの友達とのたまり場だった」という思い出を持つ人も多く、解体を惜しむ声は多い。
同区役所 総務課の担当者は「見慣れたものがなくなるのは寂しいという市民の皆さまの声をたくさんいただいている。とても残念だが、安全性を維持するための費用も高額になるためやむを得なかった」と話す。
9月24日に区役所駐車場で開催される音楽イベント「Arteよのだもんね」で、解体作業のためすでに囲われている車体の側に「ありがとうメッセージボード」を設置し、自由に「甲虫」へのメッセージを書いてもらう。
イベント開催時間は10時~16時。