大宮で立ち上げられた機械式腕時計ブランド「mirco(ミルコ)」(さいたま市大宮区宮町4)がヨーロッパで高評価を得て、5月1日初回販売分が予約で完売という好調なスタートを切っている。
日本製機械式腕時計ブランド「mirco」と平岡さん(関連画像)
さいたま市出身で高校時代のアメフト部の同級生、平岡雅康さんと渡辺達也さんが昨年10月に立ち上げた同ブランド。高校時代の部活の帰り道、雑誌を見ながら熱く語り合っていたという2人。その後、平岡さんはオリエント時計に長年勤務、渡辺さんは時計専門店でバイヤーとして勤務した後、アンティーク、中古時計など複数の企業を経験。今回、長年の夢でもあった国産の機械式時計を作りたいとブランド立ち上げに至った。
3、4年前にも一度立ち上げを画策したものの、部品を提供してくれる業者と出会えず断念。今回、パーツの生産や組み立てが可能な群馬の業者と提携したことから、生産を始められた。
自らもコレクターで長年仕事としても関わりながら、日々腕時計について思いを巡らせていたという平岡さんは、自分のブランドを立ち上げるという初めての事業にも迷いはなかったという。「何十年と時計を見て来た。お風呂に入りながら、食事をしながら、ふとした瞬間も気づくと時計のことを考えている。こうしたいというデザインや構造は以前から温めてあった」と話す。
初のモデルは「TYPE-02」で、カラーは5種類。2レジスタークロノグラフでベルトは本革。「70年代風を現代っぽく仕上げ、レトロフューチャーなデザイン」。スクエアとサークルを重ね合わせた肉厚なフォルムをしている。
世界に日本製機械式時計を発信するため、同モデルのデビューに選んだのは、スイスのバーゼルで毎年開催される世界最大級の腕時計の見本市「バーゼルワールド」。今年は3月21日~26日に行われ、世界中のコレクターやバイヤーが10万人以上来場した。ミルコは大きな注目を集め、有名な腕時計の雑誌を含む複数の取材も受けたという。
特に足を止めたのはフランス人で、5種類のカラーのうち、「ブルー」が圧倒的人気を集めたという。平岡さんは「カラー展開を考える際、日本人の好みを考え、白、黒は鉄板だと考えたが、ブルーは自分が好きで売れなくてもいいと思いつつラインアップに入れた。フランス人をはじめとする海外の人にはブルーが一番人気だった」と驚く。「まさか自分のブランドを持って、バーゼルワールドに立てるとは思ってもいなかったが、デザインにも性能にも自信はあった。方向性が間違っていなかったと分かりホッとした」とも。
同市での評判から、5月1日発売の初回販売分100本は発売前に予約で完売。7割ほどが海外からの発注という。5月に始まった7月販売分の予約も好調で、すでに完売のモデルもあるという。価格は、27万円。
初めてのモデルで「TYPE-02」なのは、今後のシリーズを見据えて。「TYPE-01」は「もっとシンプルなデザインをすでにイメージしている」ほか、来年のバーゼルワールドに向け、「TYPE-03」も企画が進んでいる。
平岡さんは「わくわくする展開に楽しみで仕方ない。1969(昭和44)年のクオーツショック以降、影を潜めてしまった日本の機械式腕時計の素晴らしい技術を復活させ、世界に見せていきたい」と意欲を見せる。