「伝わらないリアル」をテーマに制作を続ける美術家・大谷尚哉さんの個展が現在、埼玉県伊奈町の野菜直売所併設レストラン「ベジボーイキッチン」(伊奈町小室)で開かれている。主催は同店を経営する「ベジタブルボーイズカンパニー」。
同展は、アートギャラリー「Gallery Pepin(ギャラリーペピン)」(さいたま市緑区)の協力で2023年から企画する「VEGEBOY meets ART(ベジボーイ・ミーツ・アート)」の11回目。「店内に若い芸術家たちの作品を展示してもらえないか」と、ベジタブルボーイズカンパニー社長の大橋一幸さんが同ギャラリーの小林優佳さんに依頼したことから始まった。大谷さんは初回の展示作家で、今回が2度目の展示となる。
大谷さんは、さいたま市出身で伊奈町在住。幼少期から絵を描くことが好きで、近隣の人から廃棄前のコピー用紙をもらっては、自宅にある鉛筆やボールペンを使って、ひたすら絵を描いていたという。小学生の頃はキャラクターカードの模写に夢中で「年賀状にも描き添えていた」という。高校生の頃に写実画家になることを考えて油絵科に進学したが、「写実絵画だからこそできる表現」を求め、「伝わらないリアル」をテーマにした制作を開始。モチーフやシチュエーションを独自に創作し、「日常ではありえないもの」を実体化して観察しながら描いた作品を制作し続けている。
同展では、こうしたテーマ作品と主催する「ベジタブルボーイズカンパニー」が生産する野菜を描いた静物画など21点を展示。作品「青を映すカボチャの形をした何か」は、鑑賞用カボチャを使ってシリコン型を制作し、透明樹脂を流し固めて作ったモチーフを描いた。モチーフを箱に入れて照明を当てるなどし、幻想的な様相に仕立てて見たままを描写した。「写実絵画はモチーフと比較され『本物に見えるか。うまいか、下手か』を意識されがちだが、鑑賞する人の意識を別のところに向かせたい」と説明する。
野菜の油絵は、自著「1日で描くリアル油絵の基本」(ホビージャパン)の作例としてSNSにも投稿。「描いているだけでは、作品を好きになってくれるかもしれない人に届かない。投稿をきっかけに展示に足を運んでもらえたら」と期待しつつ、「食事に来た人が作品を見て、野菜売り場で買って帰ってくれたらうれしい」とも。
同社レストラン事業部の甚内謙二さんは「絵を見て『この野菜は何か』と声をかけてくれたり、野菜を買って帰ったりするお客さまもいる。絵のおかげで店の雰囲気がさらに良くなった」と話していた。
営業時間は10時~22時(日曜は21時まで、13時50分~18時は野菜販売のみ)。月曜・火曜定休。7月26日まで。